News Letter No.55(2023年12月9日〔土〕理事会及び総会報告)
法科大学院協会事務局
法科大学院協会の理事会が2023年12月9日(土)10時より、また総会が同日13時より、いずれもzoomによるオンライン方式で開催されました。
以下、総会で審議・報告された事項を中心に、概要をご報告申し上げます。
総会では、議事に先立ち、松下淳一理事長(東京大学)から挨拶があり、令和に入ってから、いわゆる3+2、早期卒業制度と既修者入試とを組み合わせた法曹になるまでの時間短縮、法曹コース(法曹養成連携協定に基づく連携法曹基礎課程)と組み合わされた特別選抜制度、在学中受験といった重要な制度改正が相次いだが、そのうち在学中受験については、来年度以降がどうなるかは予断を許さず、望ましいカリキュラムのあり方等の検討、法科大学院として在学中受験にどのように向き合うのか、引き続き推移を注意深く見守り、法科大学院間の情報共有にも留意したい旨が述べられたほか、総会終了後に行われるシンポジウムのテーマとなっている、法科大学院教育と司法修習との連携も重要な課題であり、プロセスとしての法曹養成のなかでそれぞれがどのような役割を果たすべきであるかにつき、法科大学院、司法研修所のみならず、法律家の世界全体、社会全体をも巻き込んで、議論が必要であるとの認識が示されました。また、協会の目的の実現に向けて、会員校への情報提供の充実、関係諸機関・諸団体との連携の一層の緊密化、法科大学院から社会に向けた多様な情報発信について尽力し、様々な工夫を凝らしたいとの抱負が示され、それについての会員校の協力の依頼が述べられました。
次に、保坂孝・文部科学省高等教育局専門教育課専門職大学院室長より、中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会の今期の活動の概要・予定や、加算プログラム、法定公表事項、教育関連給付制度を中心に、行政説明がなされました。
1 会員・準会員の入退会に関する件(報告)
石田京子専務理事(早稲田大学)より、次の通り会員資格の喪失があった旨が報告されました。
甲南大学(法科大学院が2023年10月末付けで閉校)
2 人事に関する件(報告)
石田専務理事より、次の通り理事の交代があったことが報告されました。
・酒井啓亘→横山美夏(京都大学)
・北居功→高田晴仁(慶應義塾大学)
3 令和5年度(2023年度)のキャラバン企画について(報告)
石田専務理事より、今年度のキャラバンの実施状況について、2023年6月10日の総会以降、東北会場が6月18日に対面で実施され、オンラインで同時配信され、約100名の参加があったこと、今後、名古屋会場が2024年2月17日に名古屋大学にてハイブリッド方式での開催予定であること、関西会場は、今年度は中止の予定であるとの報告があったほか、会場校、共催団体である日弁連および後援を頂いている文部科学省、法務省、最高裁判所に対する謝辞が述べられました。
4 令和6年度(2024年度)のキャラバン企画について(審議)
石田専務理事より、令和6年度(2024年度)ののキャラバン企画について、❶過去3年間行ってきた、「全国版法科大学院オンライン説明会」を当面継続して実施する、❷従前、各会場につけてきた20万円の予算はつけないこととする、❸その場合でも、裁判官・検察官派遣の手続については、全国版のみならず各地の会場からも依頼があれば、事務局で担当する、❹全国版キャラバンについて、第1部は従来通りとしつつ、第2部について、個別ブースを開催することを希望する大学については、従来通り各大学がZoomなどを設定するほか、資料のアップロードについても各大学が準備し、Zoomの接続情報と資料アップURLを各大学から協会に情報提供し、それを協会事務局側ではGoogle Documentなどで参加者一般に公開する形にする、という内容の提案がなされました。また全国版キャラバンの第2部について、実務家のブースについても、先方からの協力があれば設置を継続したいと考えている旨の補足説明がありました。
この提案が、理事会の議を経た上で総会において承認されました。
5 共通到達度確認試験について(報告)
松下理事長より、標記の件について、第5回共通到達度確認試験の実施予定について紹介があったほか、データ収集への協力について会員校および入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会委員に対する謝辞と依頼がありました。また当該試験が、2019年度から日弁連法務研究財団と法科大学院協会で「共通到達度確認試験管理委員会」を組織して実施していること、運営資金について当該共同事業の負担金という形で財団から支援して頂いていることの紹介があり、到達度試験の円滑な実施の継続のため財団の支援が不可欠であり、今後も協力関係を継続していきたいと考えている旨が述べられました。
6 各専門委員会からの活動報告(報告)
(1)カリキュラム等検討委員会「未修者教育に関する取り組みについて」
小池信太郎主任(慶應義塾大学)から、カリキュラム等検討委員会中、未修者基礎教育検討小委員会およびコア・カリキュラム等検討小委員会の2つの小委員会を設けていること、このうち未修者基礎教育検討小委員会においては、2021~2022年度に実施された憲・民・刑・訴訟法科目に関するFD講演会の成果を踏まえたさらなる取組みについて検討準備を進めていること、コア・カリキュラム等検討小委員会においては、各法科大学院におけるコア・カリキュラムの利用等に関する現状を把握すべく、アンケート調査等の実施を念頭に検討準備をしており、近年の民法・商法・刑法等の重要な法改正の教育内容への反映のあり方などの課題を認識しつつ、長年変更されていないコア・カリキュラムの見直しに必要な資料の収集及び分析に向けた作業に取り組んでいることについて、説明がありました。
(2)修了生補助教員ネットワーク委員会「修了生補助教員ネットワーク委員会の活動状況について」
高須順一主任(法政大学)から、まず、当該委員会設置の発端となった「補助教員の組織的・機能的な活用に関する調査研究」が無事に終了し、成果報告書が作成できたこと、この研究を通じて各法科大学院における補助教員の安定的・継続的・発展的活用の必要性が確認され、補助教員が法科大学院教育に関与しうる仕組みの確立や、担い手となる人材の確保などの具体的提言がなされていること、異なる法科大学院に所属している補助教員同士の情報共有の場の確保やネットワーク構築の必要性に関しても提言がなされているとの説明がありました。ついで、これにより2023年度は、当委員会が一休みの状態となっていること、ただし、当委員会の協力先である一般社団法人法曹養成ネットワークにおいて、「プロボノマッチング2023」および「法科大学院補助教員・実践シンポジウム2023」を9月2日に開催したこと、当委員会として、これらの活動に今後とも協力していく予定であることについて、報告がなされました。
(3)司法修習連携等検討委員会「司法修習との連携について」
和田俊憲主任(東京大学)から、まず、前回の総会以降、司法研修所との意見交換会を、2023年6月および9月にオンラインで実施し、法科大学院の民法および刑法の理論科目、ならびに、研修所の民事裁判および検察の起案科目を対象に、それぞれの実情について情報共有および意見交換をしたことについて報告がありました。次いで、今回から、民法については「不動産物権変動」、刑法については「強盗罪」といった統一テーマを毎回設定し、当該テーマを扱った法科大学院と司法研修所の双方の授業の動画を事前に視聴したうえで、双方の授業内容を具体的に比較しながら、あるべき段階的な教育のあり方を探るという新たな試みを始めたこと、その結果として、この2回の意見交換会において、テーマによって、法科大学院と司法修習の教育内容が現状においてすでに見事に段階的な学習を促せるものとなっていることが確認できたり、理論と実務とで思考方法がまったく異なり、それが双方の授業内容にも反映していて、そのギャップをいつどのように埋めるべきかという課題が確認できたりといった大きな収穫が得られたこと、これを踏まえ今後もしばらくは、授業動画を確保できる限りで、同じ形式を続ける予定でいることについて報告がありました。最後に、2024年2月19日開催予定の次回意見交換会について、刑法の共同正犯における「共謀」を統一テーマとしていること等、案内がなされました。
(4)司法試験等検討委員会「司法試験アンケートについて」
堀田周吾主任(東京都立大学)から、令和5年司法試験に関するアンケート調査を例年通り実施していること、回答が出そろい次第集計の上報告書をとりまとめ、1月下旬を目途に、協会のメーリングリストにて配布するとともに、ウェブサイトでも公開する予定であること、日本弁護士連合会との共催で、司法試験シンポジウムを2024年2月17日(土)午後に都内で開催し、「新しい状況下での司法試験の出題傾向等の検討」(仮題)というテーマ名の下で、行政法と商法の出題を題材に、在学中受験が始まった司法試験の今後のあるべき方向性について議論する予定であることについて、報告、案内がありました。
(5)入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会「共通到達度確認試験の実施について」
司会代読により、藤本亮主任(名古屋大学)から、共通到達度確認試験への協力への謝辞、第1回共通到達度確認試験受験者を対象とした追跡調査が共通到達度確認試験管理委員会により実施されたことの報告および、それに対する協力への謝辞が述べられたほか、第1回から第3回までの共通到達度確認試験の受験者が司法試験を受験したことの確認、この3回の試験受験者を対象としたデータ収集が会員校になされていることの案内および協力のお願いがなされました。また、第5回共通到達度確認試験が2024(令和6)年1月7日に実施予定であることの案内および協力のお願いがなされました。
(6)臨床系教育等検討委員会「委員会での取り組みについて」
司会代読により、宮城哲主任(琉球大学)から、臨床系教育等検討委員会が、2023年度の活動方針として、①司法試験の在学中受験の開始に伴う法科大学院における臨床系科目の履修動向の調査の検討と、②法科大学院における臨床系科目のコア・カリキュラムのあり方についての検討を掲げており、検討を進めていくことの報告と、会員校に対するあり得る協力のお願いが述べられました。
(7)修了生職域委員会「修了生の職域拡大のための取り組みについて」
米田憲市主任(鹿児島大学)から、委員の了解を得られていない部分もあり、座長としての中間報告としての性質を有するとの留保の上、①修了生職域委員会において2022年度以来、(1)各職域への人材の供給の充実および職域拡大、(2)法曹養成のより早い段階で新しい職域の知悉やそのための教育を視野に入れた、協会内の関係委員会等との連携、(3)法曹養成制度の新たなスケジュールによるギャップの発生阻止のため各法科大学院や関係組織への情報発信と学生への周知を図ること、の3点に留意した取り組みをしてきたこと、現時点で職域拡大と、協会内の他の関係委員会との連携に課題を残していること、昨年度の取組みであった、組織内弁護士協会(JILA)、経営法友会、東京3弁護士会合同の就職協議会、大阪弁護士会、司法研修所との情報交換は、一定の成果を上げていること、在学中受験制度に対応する形で企画された就職説明会の情報提供や、各職域をアピールする講座などの開催がなされ成果を上げることができたこと、②就職状況の概況としては、昨年度に続き明らかな売り手市場にあること、サマークラークの定着や就職過程への人材紹介会社の介在の増加が見られること、就職後の転職も早期化・活発化していること、司法試験未合格修了生の求人も増加していること、かかる情報の情報源であった「ジュリナビ」の「司法修習終了者の就職状況」に関するサイトがなくなり、司法試験合格者の進路の客観的な傾向把握という点で課題が生まれていること、司法試験未合格法科大学院修了者の進路調査が継続課題であること、最近法科大学院についての好意的な報道が増えてはいるが、法科大学院制度の制度変更により、現在と異なる環境での学修者の経験を取り上げたものが多分にあり、学生達には情報の内容や質についてよく吟味する必要を伝える必要があると考えられること、③今年度内の課題として、(a)規模にかかわらず法律事務所や企業への供給不足があり、地方の供給数が司法制度改革当初を下回っている現状にあること、司法試験合格者1700人超という状況の下での法曹の職域拡大につき新たな認識が必要であること、(b)司法試験合格者数の増加などによる影響を踏まえて、各法科大学院では、在学中受験制度の下で可能になった進路情報の提供を一層積極化することとあわせ、学生に対して法科大学院修了後司法試験に合格するまで情報提供ができるような関係形成をすることが望ましいこと、(c)(当該委員会の課題として)2022年度に情報交換を行った各組織との関係の継続による、各組織における就職支援活動の情報の協会を通じた発信および他の委員会との協力による理論と実務が架橋される法科大学院教育のあり方を追求できる取組みの実施があると認識していること、について報告がありました。
(8)広報委員会「法科大学院協会からの情報発信について」
小林学主任(中央大学)から、キャラバン東北会場の盛況についての謝辞が述べられたほか、協会HPについて、引き続き、コンテンツの作成・充実に取り組んでいること、今後も情報の周知に尽力すると同時に、会員校・準会員校での学部生等への広報にも大いに活用して頂きたいと考えていることおよび、会員校・準会員校の法曹コースを案内するウェブサイトへのリンク集も設置しているためリンク先の差し替え等の必要その他気づいた点があれば随時協会事務局まで知らせて頂きたい旨が述べられました。また、関係機関との連携強化の一環としまして、法務省、文科省、日弁連、最高裁、法科大学院協会で会合をもち、協働して法曹の魅力発信のための検討を引き続き進めていること、その他、出版社をはじめとする各団体とのコラボレーション企画の検討も進めていることの報告があった後、広報についてのアイディアの募集がなされました。
7 その他(最近の状況に関する報告と意見交換)(報告・懇談)
(1)前回総会以降の協会の活動報告
石田専務理事より、前回総会以降の協会の活動報告として、まず
1.News Letter No.54(2023年6月10日〔土〕理事会及び総会報告)を9月15日付けで発行しホームページで公表したこと、
2.法曹養成制度改革連絡協議会(第21回)が10月4日に開催され、執行部で出席し、❶国、地方、福祉等の分野における法曹有資格者の活動領域の拡大、❷令和4年度法学部生アンケートの調査結果、❸今後の法曹の質の検証などについて、意見交換等がなされたこと、
3.司法試験合格者氏名掲載の「官報」の販売につき、9月7日に、国立印刷局からの案内を協会のMLにて共有したこと(例年より多い3,000部強の注文があったとのこと)
について報告がありました。
以上の他、石田専務理事より、2023年6月16日閣議決定の「骨太の方針」を踏まえた同月9日閣議決定の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において導入に向けたシステムの設計・構築等を進めることとされたCBT(Computer Based Testing)方式による試験の導入について、同年11月29日に、法務省大臣官房人事課の担当者による説明会があり、会員校からの事前の質問も含め、活発な意見交換がなされたことが報告されました。
これを受けて、以下の意見交換がなされました。理事会・総会に分けて報告致します。
【理事会】
理事会では、まず、プレテストの実施対象者を含め、法務省において法科大学院の現状についての十分な把握がないまま、仕様がどんどん決定されているという印象を受けたため、当協会から最低限の条件等を積極的に示していく必要があるのではないか、という意見が出されました。これを受け、CBTが導入されると学生から同じ様式での定期試験の実施の要望が法科大学院になされる可能性もあり、端末やソフトの手配の関係でそれらについて協会がまとまった形で法務省と交渉していただけるとありがたい旨の意見も出されました。また、説明会では、六法等も画面で提供されるという話がなされたことを受け、それにより法科大学院での教育が変わる可能性を指摘し、その点を含めた関係の委員会等の検討の必要性を指摘する声や答案構成を紙でするのかという問題もあるとの指摘も出ました。これらを受け、松下理事長より、法務省からは問題用紙の配布も画面上でなされる旨の説明があったが、学生からは問題用紙と六法は紙にすることの切実な要望が届いている旨の紹介があった上で、それも踏まえ、ポイントになりそうな所を絞って会員校からの意見を集約して法務省に伝えることを検討したい旨の説明がなされました。
【総会】
総会では、理事会におけると同様に、法科大学院・法学部での教育とシンクロしない形でCBTの制度設計がなされている印象を受けた旨の懸念が示され、当協会の方から実施の条件を提示するためのプロジェクトチーム等を作る等の積極的活動の必要性等が指摘されました。これを受け、松下理事長より、現状固まったアイディアはないが、協会として会員校の意見を何らかの形で集約し、やって欲しいこと、是非避けて欲しいことを法務省になるべく早めに伝えるような体制を整えたいと考えている旨の応答がありました。また、石田専務理事より、かかる執行部からの意見照会の働きかけを待たずに、何かあれば会員校等よりご意見を頂きたい旨のお願いがありました。
(2)その他
石田専務理事より、日弁連法科大学院センターから頂いた情報の告知として、日弁連において修習予定者向けに「民事保全・民事執行」の基礎に関する動画を制作し、3月上旬より配信する予定である旨の案内がありました。
次回理事会・総会は、2024年6月8日に、完全オンラインの形式で実施の予定です。画面越しではありますが、皆さまの元気なお姿を拝見できますことを楽しみにしております。