News Letter No.43 (2018年11月10日理事会及び総会報告)
法科大学院協会事務局
法科大学院協会の理事会が、2018年11月10日(土)11時30分より、法政大学・市ケ谷キャンパス法科大学院棟2階L203教室で、また、総会が、同日13時より、同キャンパス富士見ゲート棟5階G501教室で開催されました。開催に当たり会場の提供・準備にご尽力くださいました、高須順一法科大学院長をはじめとする法政大学関係者の皆様に厚く感謝申し上げます。
以下、総会で審議・報告された事項を中心に、概要をご報告申し上げます。
総会では、議事に先立ち、小幡泰弘文部科学省高等教育局専門教育課長から挨拶と、①法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(法科大学院と法学部等との連携強化、法学未修者教育の質の改善)、②第5回共通到達度確認試験試行試験、③共通到達度確認試験の本格実施等について、説明がありました。
また、大貫裕之理事長(中央大学)から挨拶があり、「2018年度で終了する集中改革期間の最後の年となる。法学部を巻き込む極めて大きい改革である、法曹コース創設、特に3+2のための制度改正の準備を進めていかなければならない。法科大学院在学中の司法試験受験を認める制度改正も進行している。これは現在の法曹養成制度の根幹に関わる改革である。企業法務の現場では弁護士は取り合いになるという発言もあるように、法科大学院を中心とする法曹養成制度改革は着実に成果を出している。しかし、法科大学院の成果と社会的認知が進む一方で、予備試験受験者は増えているうえ、法曹志願者の数は下げ止まりつつあるが低迷している。今般のパッケージとしての改革は法科大学院の足下を固めるための改革である。法科大学院協会としてこの改革にどう向き合うかしっかり議論しなければならない。充実した議論をお願いしたい。」旨が述べられました。
1 会員資格喪失の件
片山直也専務理事(慶應義塾大学)から、中京大学法科大学院が2018年10月をもって廃止されたため会員資格を喪失した(規約8条)旨の報告がありました。
2 理事交替の件
片山専務理事から、法科大学院代表者の交代に伴い、規約13条4項により、甲斐克則理事から松村和德理事(早稲田大学)に理事の交代があった旨の報告がありました。
3 法科大学院在学中に司法試験の受験を認める制度改正について
大貫理事長から、政府において司法試験受験を法科大学院在学中の最終学年に認める法改正が検討されていることに関して、①本年8月に協会執行部が情報を得て9月15日に臨時理事会が開催された経緯、②臨時理事会では「協会としては、専門職大学院としての法科大学院教育が維持されることを条件として、反対しないという立場を取るが、制度変更による教育現場への深刻な影響が危惧されることから、新たな枠組みが実現した場合にも、法科大学院が専門職大学院たるに相応しい教育を実施できるよう、協会会員校の声をくみ取り、法務省、文部科学省に働きかけていく。」との方針が確認されたこと、③協会執行部は、臨時理事会で確認された方針を踏まえ、9月20日に法務省及び文科省の各担当者と面会し、(1)司法試験の実施時期、(2)司法試験改革のための会議体の設置、(3)予備試験についての制度改革、(4)多様な法曹輩出のための配慮について、協会の意見を伝えた旨の報告がありました。
続けて、大貫理事長から、これらの協会の申し入れ事項に関する本日までの進捗状況につき、以下の通り報告がありました。
(1)司法試験の実施時期:交渉中である。法令事項ではないので未確定だが、協会としては3年夏休みまたは3年後期の可能な限り遅い時期の2案を提示し、前期には実施しないことを要望として伝えている。
(2)司法試験改革のための会議体設置:会議体の設置及び同会議体に協会関係者がメンバーとして入ることを申し入れ、基本的に了承されている。
(3)予備試験:交渉中である。
(4)多様な法曹輩出の要請:在学中受験はあくまで選択肢の一つであることを共通認識として協議を進め、在学中受験をしなかった者については、それを受験回数制限の際にカウントしないことを申し入れている。
さらに、大貫理事長から、以下の報告がありました。
・今回の制度変更のための法案は一般に「法科大学院改革法案」「ギャップターム解消法案」などと呼ばれているが、実際には、学部と法科大学院の連携を強化して3+2を推進するための「学校教育法」および「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(いわゆる連携法)」の改正、さらに、法科大学院在学中の司法試験受験を認めるための「司法試験法」および「裁判所法」の改正が、4本の法律の改正案をまとめて束ねた1つの法案として、政府から提出される予定である。
・10月24日より臨時国会が開かれており、文科省、法務省では、法案上程に向けた準備を行っている。
・協会執行部としては、今回の一連の改革が、プロセスとしての法曹養成制度について、司法試験の内容も含めて、包括的な改革を行う最後の機会ではないかと考えている。在学中の司法試験受験を認めることが、教育現場に深刻な影響をもたらすことは事実であるが、試験の実施時期が変わることにより、司法試験の内容もこれまでとは同じではあり得ないはずであり、3+2と在学中受験の導入によって、予備試験に流れていた層をプロセスとしての法曹養成に呼び戻すと共に、司法試験についても、法曹に求められる資質を再度問い直して内容を改革していくことが重要である。加えて、法科大学院から司法修習への法曹養成制度としての接合性をさらにより強固にすることによって、パッケージとして法曹養成制度改革を行う。このことが、今回の一連の法改正によって可能になると考え、執行部としても強い覚悟で関係各所と折衝していきたいと考えている。
・協会執行部としては、今回の改革が、社会人経験者、他学部出身者などの法曹志願に否定的な影響を与えないよう、また、会員各校の置かれた状況に対する配慮に欠けないよう、関係各所に強く申し入れをしていく所存である。会員校におかれては、この機会にあるべき法曹教育、司法試験についてご検討いただき、率直な意見をお寄せいただきたい。執行部も可能な限り会員校の意見をくみ取った形で折衝にあたりたいと考えている。
以上の報告を踏まえて、質疑応答と意見交換が行われたうえ、9月15日の臨時理事会で決められた基本的方向性及び協会執行部が関係機関と交渉を進めることにつき承認されました。
4 今年度のキャラバン企画実施報告について
片山専務理事から、キャラバンについて、既に4会場で実施され、今後5会場での実施が予定されている旨の報告があり、後援者の最高裁判所、法務省、文科省、並びに会場校・協力校に対する謝意が述べられました。
5 来年度のキャラバン企画について
片山専務理事から、執行部としては、2019年度もキャラバンを継続して行っていきたいと考えているので、会場校ならびに開催協力校には協力を賜りたい旨の報告がありました。併せて、今後キャラバンの開催場所となる大学において、後援者となれば施設使用料が免除ないし軽減される場合には、協会の予算削減のため、後援者となることをお願いしたい旨の報告がありました。
6 教員研修等検討委員会「司法研修所における教員研修について」
佐藤隆之教員研修等検討委員会主任(慶應義塾大学)から、2018年度教員研修を、刑事系は2018年8月31日、民事系は同年9月6日に、いずれも司法研修所において実施し、第71期 A班の集合修習を見学した上で、法科大学院教員と司法研修所教官の意見交換を行った旨の報告がありました(なお、教員研修の報告は協会ウェブサイトに掲載予定です)。
また、佐藤主任から、藤本亮委員(名古屋大学)が2018年度末に退任することに伴い、来年度以降の委員を小林学教授(中央大学)に委嘱したい旨の報告がありました。
7 司法試験等検討委員会「司法試験アンケートの実施について」
髙橋直哉司法試験等検討委員会主任(中央大学)から、2018年司法試験に関するアンケート調査結果に関して、以下の通り報告がありました。
・すべての法科大学院を対象としてアンケート調査を行い、52校から回答を得た。
また、髙橋主任から、12月1日の日弁連のシンポジウムにおいて今回の調査結果を紹介する、12月21日に法務省で開催される司法試験検証担当考査委員会議に法科大学院協会の関係者も出席し、今回の調査結果も踏まえつつ議論をする予定である旨の報告がありました。
なお、調査結果は協会ウェブサイト(https://www.lskyokai.jp/wp/rp_181206/)で公開されています。
8 入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会「共通到達度確認試験の実施について」
藤本亮入学者選抜・共通到達度確認試験等検討委員会主任(名古屋大学)から、共通到達度確認試験の実施に関連して、以下の通り報告がありました。
・第5回共通到達度確認試験試行試験について
第5回共通到達度確認試験試行試験は、2019年3月14日(木)に、第4回試行試験までと同様の実施体制・実施要領で実施する。
・2019年度に実施予定の共通到達度確認試験(本格実施)について
(1)2019年度共通到達度確認試験は、2020年1月12日(日)に実施する。
(2)2019年度共通到達度確認試験は、未修課程教育の改善につなげるという目的に鑑み、未修課程1年次生の受験を必須とするが、各法科大学院の事情に応じ、2・3年次生(未修課程2・3年目および既修課程1・2年目)の受験も可能とする。2・3年次生の受験を認めるか、認める場合必須とするか任意とするかも含めて各法科大学院で決定するものとする。なお、今後導入される法学部法曹コース在学生等の受験資格については引き続き検討する。
(3)受験料は1万円以下とする。管理委員会への受験料納付は2019年度については法科大学院単位でとりまとめをお願いする。
(4)試験実施は本試験のみとし、追試・再試は管理委員会としては実施しない。各法科大学院で過去問等を利用しての対応をお願いする。
(5)問題冊子は、印刷費用節約のため、印刷用原本を各法科大学院に送り、受験者分を印刷してもらう。
なお、第5回試行試験時には、試験で利用する問題冊子は印刷済のものを送付するが、本格実施に備え、印刷用原本も別途送付し、印刷・製本マニュアルに従って数部印刷して返送してもらうという試行を実施する。
(6)試験成績は1月末をめどに各法科大学院に返却する。各法科大学院から受験生に個別の成績を伝達する。成績通知時に、問題の正答と解説や、全受験生の問題ごとの正答率等の統計値および成績統計を公開する。各法科大学院には、自校の問題ごとの正答率等の統計および受験生個々の成績と自校受験生の成績統計を伝達する。
(7)各法科大学院は、未修者教育改善のために、この試験成績を進級判定資料のひとつとして、それぞれの事情を踏まえて、適切に活用していただきたい。
9 臨床系教育等検討委員会「現在の活動について」
後藤昭臨床系教育等検討委員会主任代行(青山学院大学)から、以下の通り報告がありました。
・本年6月9日の協会総会に合わせて開催したシンポジウム『ロースクールだからできる教育、育った法曹―臨床法学教育―』の記録を法学系の媒体に掲載することを検討している。
・各法科大学院での臨床系教育の実施状況についての調査を計画している。回答に協力願いたい。
10 修了生職域委員会「第6回就職動向調査の報告等について」
阿部博友修了生職域委員会主任(一橋大学)から、以下の通り報告がありました。
・第6回就職動向調査の結果をまとめた。報告書は、協会ホームページに掲載する。
・委員会は、今後も就職動向調査を継続する方針である。
また、阿部主任から、10月23日に開催された東京商工会議所主催の第2回就職情報交換会に参加した件につき、日本全国から約80の大学と会員企業とが就職情報の交換を行う企画であるが、今年は法科大学院協会として参加した結果、15の企業から法科大学院修了生の採用を検討しているとの回答を得たので、これらの情報を職域委員会を通じて各大学の就職支援課に提供し、さらにそこから修了生に情報提供することで、人材の有効活用に貢献していくこと、また、来年1月に開催される第3回の東京会議所主催情報交換会への参加、及び大阪商工会議所との同様の取組を今後検討する旨の報告がありました。
11 広報委員会「法科大学院協会からの情報発信について」
磯部哲広報委員会主任(慶應義塾大学)から、「ホームページのリニューアル版がオープンした。スマートフォンにも対応したものになっている。今後も法科大学院の志願者増に向けてサイトのリニューアルを継続的に検討するなど、広報活動の強化充実を図っていく。各地のキャラバンでもより効果的な発信ができるよう、工夫を行っていきたい。」旨の報告がありました。
12 その他
片山専務理事から、最近の協会の活動と今後の行事について、以下の通り報告がありました。
・News Letter No.42発行(6月9日)
・日弁連と法科大学院協会との意見交換会(6月12日、7月20日)
・司法研修所と法科大学院協会との意見交換会(10月30日)
・司法試験合格者氏名掲載の「官報」の予約販売(約1,750部)
・日弁連主催・法科大学院協会共催の司法試験シンポジウム(12月1日)
次回総会は、2018年11月10日の総会では2019年5月25日(土)とお伝えしましたが、会場手配等の都合により、2019年6月22日(土)に日程を変更いたします。会場につきましては、決定次第改めてご案内いたします。