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法科大学院協会=韓国法学専門大学院協議会第2回交流会

 本協会と韓国法学専門大学院協議会との第2回交流会が,去る8月19日から21日まで,韓国のソウルおよび大邱・慶州において開催された。日本側からは,薫はじめ本協会関係者および12の会員校代表者等のほか,文部科学省,法務省,日本弁護士連合会関係者を含め21名が参加,韓国側も申鉉允(シン・ヒュンユン)理事長(延世大学)はじめ,全国25校中ほとんどの法学専門大学院の代表者等28名が参加し,盛会となった。

 交流会のメインの行事は,8月20日,韓国南東部の中心地・大邱市所在の有力な総合大学である国立慶北(キョンブク)大学校を会場として実施されたが,大学を挙げての歓迎を受け,同大学の法学専門大学院の実情説明や施設見学の後,「ロースクールの現況と発展方向」というテーマで共同シンポジウムが行われた。

 このシンポジウムでは,両理事長の挨拶の後,基調報告として,韓国側からは,の朴泳珪(パク・ヨンギュウ)ソウル市立大学校法学専門大学院長による「法学専門大学院における法学部/非法学部出身の差異分析」と題する報告と,の金浩楨(キム・ホジョン)韓国外国語大学法学専門大学院長による「ロースクール出身の弁護士の社会進出と弁護士数に対する想定」と題する報告があり,日本側からは,松下淳一理事(東京大学)による,「日本法科大学院の現状と発展方向」と題する報告があった。

 そして,これらの報告を基に,基調報告者を含め日韓それぞれ4名ずつのパネリストによるパネル・ディスカッションが行われた(日本側は,大貫裕之常務理事〔中央大学〕,片山直也理事〔慶応義塾大学〕,酒巻匡理事〔京都大学〕にパネリストをお願いした)。このパネル・ディスカッションでは,パネリスト間やフロアの参加者との間で活発な質疑が交わされ,それぞれの国の実情を踏まえた充実した意見・情報交換の場となった。

 今回の共同シンポジウムを通じ,韓国でも,以下のようなーわが国と共通するところも少なくないー様々な課題や問題を抱えており,日本における動向や予備試験の実情などにも強い関心が持たれていることがよく分かり,大変有意義であったというのが,日本側参加者の一致した感想であった。

①法学専門大学院では,非法学部出身者も法学部出身者も全く区別なく,3年制の履修課程で学ぶことになっているが,制度上,法学士以上の学位取得者は一定限度まで単位取得済みの認定を受けることができるという特典が与えられているため,負担に差があることや,法学の基礎知識の差におそらく起因して,基本法律科目の成績に差が現れていることなど,差異があることから,全体としての整合性を保ちながら,特に非法学部出身者に対する教育を如何にして効果的なものにしていくかについて,工夫が重ねられている(ただし,2017年以後は法学専門大学院を開設した有力大学の法学部は全廃される)。

②法学専門大学院修了者で2012年の第1回弁護士資格試験に合格した者は1,451名(修了者中86%,受験者中87.2%)であり,2013年の第2回試験では1,538名(受験者中75.2%)であったが,その結果,法学専門大学院出身者が多数,弁護士となることにより(2012年6月現在,韓国の開業弁護士数は10,697名であるのに対し,ここ2年間の〔旧〕司法試験合格・司法研修院修了者と法学専門大学院修了者・弁護士資格試験合格者は合わせて4,000名を超える),法曹三者のみならず,企業や公務員などへの進出が拡がっている(2012年弁護士資格試験合格者のうち,同年10月時点で96%が就職,その内訳は,弁護士事務所就職者48.7%,個人開業弁護士2.2%,行政官庁等公共機関就職者18.7%,企業就職者16.3%,裁判所ロー・クラーク7/2%,検事2.9%)。

③その反面,採用する側は特別の待遇をしないという傾向が出てきており,法律事務所でも,一部で,給与条件を極端に切り下げるなどの現象も現れており,また,〔旧〕司法試験合格者と法学専門大学院修了・弁護士資格試験合格者との間で,業務開始までの制限の有無(〔旧〕司法試験に合格し司法研修生になった者は弁護士業務を行えるのに対し,弁護士資格試験合格者は6ヵ月の研修等を経なければ開業・事件受任ができない)や,裁判官・検事任用の手続等に差異があることから,双方に不公平感があり,憲法訴願なども提起されるなど問題化している。

④地方の法学専門大学院修了生も多くがソウル首都圏の弁護士事務所等に就職しようとする傾向が著しいため,地方への法曹供給の確保を理由として,これを制限しようという提案がある一方,首都圏と地方との仕事量の格差を指摘し,これに強く反発する動きもあるなど,対立が生じている(弁護士資格試験が首都圏1カ所でしか実施されないことなども,地方の法学専門大学院関係者の間で問題視されている模様)。

⑤政府(法務部)では,今後も弁護士資格試験合格者を年1,500人(法学専門大学院入学定員比75%)に固定する考えのように見えるが,不合格者が累積していけば,〔旧〕司法試験が廃止され,弁護士資格試験のみになる予定の2018年には,受験者比合格率は24.2%まで落ち,大量の「弁試浪人」が発生することになる見込みであり,「資格試験」としての本来的趣旨に反し,法学専門大学院での教育にも悪影響を及ぼすことが懸念される(学生の間からも,職業の自由や平等権の侵害だとして,憲法訴願が提起されている)。

⑥法学専門大学院に対して,法曹界の中などから,(i)高コストで低所得層が法曹になることを困難にしている,(ii)理論に偏った教育で修了者の質が低下している,(iii)一部の大規模な法学専門大学院を除き,経営赤字になっているから,これらを整理・統合した方がよい,などの理由を挙げ,〔旧〕司法試験の存置や,日本に倣った予備試験制度の導入を求める動きがあり,それらを巡って激しい論争が展開されている。

 以上の報告やパネルディスカッションの内容については,現在,韓国側で整理が行われており,それを待って,本協会でも,なるべく早く,適切な形で,それを会員校のみならず広く社会に向けても公表することを考えている。

 今回の交流会については,お忙しい中,参加くださった方々はもちろん,会員校や文部科学省,法務省および日本弁護士連合会から,様々な御協力をいただいた。心から感謝申し上げたい。

(法科大学院協会副理事長・井上正仁)

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