News letter No.22(2009年3月14日理事会、総会及びシンポジウム報告)

法科大学院協会事務局

 2009年3月14日(土)10時30分より、神戸大学六甲台地区第2学舎において理事会が、同日12時30分より同学舎において総会が開催されました。また、総会に引き続き午後2時より、同学舎においてシンポジウム「実務基礎教育の現状と課題」が開催されました。開催に当たり会場の提供・準備に御尽力下さいました磯村保常務理事・赤坂正浩理事・窪田充見常務委員はじめ、神戸大学関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
総会では、後藤昭常務理事の司会の下、以下の事項について報告と提案がなされ、承認されました。
尚、議事に先立ち、文部科学省高等教育局藤原章夫専門教育課長より挨拶があり、各法科大学院においては、志願者数の減少の中で入学者の質を適切に確保すること、司法試験の合格率が低迷する中で、修了生の法曹への進路を確立すること等の多様な視点からの入学定員のあり方について検討を行っていただきたい旨要請されました。また、中央教育審議会法科大学院特別委員会に、各法科大学院の改善計画・認証評価結果等に基づき教育改善の状況を追跡調査することを目的に新しいワーキンググループを設置したことの報告がなされるとともに、各法科大学院の入学者選抜状況・修了認定状況・修了者の進路状況・教員の研究実績等についての積極的情報公開の実施が要請されました。加えて、予備試験の導入により、まさに法科大学院の存在意義が問われることになるので、法科大学院が法曹養成の中核機関としての使命を全うできるよう、尽力されたいとの要請がなされました。

1 予算の件

浦川道太郎財務担当理事より、2009年度予算案の提案・説明があり、原案どおり承認されました。

2 法曹養成制度のあり方に関する連携協議の件

連携協議委員会の大澤裕主任より、2008年度新司法試験に関し、会員校20校の協力を得て実施した「法科大学院の成績と新司法試験の成績との関連性に関する調査」の報告書が、協力校会議での議論を経てまとまり、3月中には各会員校宛送付の予定である旨報告されました。また、2009年度以降の検証について、①法科大学院協会が主体となって引き続き調査を実施すること、②調査対象を参加意思のある(参加に伴う責任と負担を了承する)すべての会員校に拡大すること、を主な内容とする基本方針が説明され、了承されました。更に、五者協議会の下に、「検証ワーキンググループ」と並んで、新たなワーキンググループ(広く新しい法曹養成制度とその下での関係機関の連携のあり方を議論するもの)を設置することが検討されていることについて報告があり、これについては、連携協議委員会において、五者協議会のメンバーである井上正仁常務理事と同幹事会メンバーである大貫裕之事務局長と相談の上、対応していくことが了承されました。

3 適性試験実施主体の件

担当の永田眞三郎専務理事より、大学入試センターが適性試験実施を取り止めた後の実施主体等の問題について、昨年12月の理事会・総会以降、当協会と日弁連法務研究財団との間で、3回の会合がもたれ、2011年以降に実施する適性試験については、法科大学院・法曹三者・学識経験者・日弁連法務研究財団・社団法人商事法務研究会を母体とする「適性試験実施委員会(仮称)」を設立し、基本的な事項を審議・決定すると共に、実施事務局を置き、適性試験の実施にあたる旨の基本的合意に達したことが報告されました。また、2010年度にプレテストを実施する予定であること等が説明されました。

4 法科大学院修了者職域問題の件

法科大学院修了者職域問題等検討委員会主任の浜川清理事より、法科大学院修了者の就職等をめぐる問題点の分析が示され、同委員会と人事院等関連諸機関・団体との意見交換状況及び本府省業務説明会・企業法務シンポジウム・法科大学院就職支援担当者会議の実施状況が報告されました。特に、法務省大臣官房司法法制部主催の「法曹有資格者の活動領域の拡大に関する意見交換会」での「とりまとめ」において、当協会としては、各法科大学院に対し、企業からの講師派遣・法科大学院生の企業でのエクスターンシップ・企業法務に関する講演会実施等を通して企業内法曹有資格者の役割等を法科大学院生に理解させるよう促すべき旨求められていること等について報告されました。

5 その他
 1. 前回(2008年12月)の理事会・総会以後の動きについて

後藤常務理事から、①法科大学院の改善に向けたアンケートの実施がなされ、得られた情報を会員校に伝達すると共に3月5日に調査結果のフォローアップがなされたこと、②当協会執行部が、1月28日・2月24日には日弁連執行部、1月21日には司法研修所と意見交換会を持ち、今後も各意見交換会を継続していくこと、③司法試験委員会が予備試験実施方針案について、また、総務省が「法科大学院の教育と司法試験の連携等による法曹の養成に関する政策評価」を含む行政評価について、各々パブリック・コメントに付したので、執行部において事務局長名で意見を提出し、会員校に対しても意見を提出するよう御願いしたこと、④3月13日に「法科大学院を中心とする現行の法曹養成制度」及び「法曹人口3000人増員計画」に批判的な「法曹人口を考える国会議員の会」が設立され、有力議員も会長・会長代理等に名前を連ねており、その動向に注目する必要があること等が報告されました。

 2. 理事人事について

長谷部恭男理事、浜田道代理事が、それぞれ所属大学の法科大学院の専攻長を退任するのに伴い、後任の佐伯仁志専攻長、紙野健二専攻長と理事を交代することが報告され、了承されました。

 3. 教員研修について

教員研修等検討委員会の田口守一主任に代わり後藤常務理事から、①2009年度は現行修習についての教員研修を行わないこと、②新司法修習の集合修習につき、8月下旬から9月上旬の時期に教員研修を実施する予定であること、③研修内容は単なる参観ではなく、司法研修所教官と法科大学院教員との意見交換の場とする予定であることが報告されました。

総会の最後に出席者による意見交換が行われ、それを受けて、青山善充理事長から、大要、以下の通りの発言がありました。

理事長発言(要旨)
 法科大学院に対しては、様々な逆風が吹いている。これらに対して、当協会としてもシンポジウムを開いたり、声明を出す等して反論すべきは反論してきたが、法科大学院自身にも、改善すべき点があることは各法科大学院宛に発信し続けており、その一つが過日実施したアンケート調査である。その結果を見ても、各法科大学院が改善の努力をしていることを疑うものではない。
現在、文科省によって強力に推し進めてられている入学定員削減の指導によって、国立大学法科大学院を中心として平成22年度入試からほぼ2割削減の動きが広がっています。当協会のスタンスは、これとは異なり、初めに一定数の定員削減ありきではなく、各法科大学院が自主的に教育の質を向上することこそが重要で、その一環として定員削減問題を検討すべきである、という考えである。法科大学院の入学定員の現状について、「そもそも文科省が設置認可したからではないか」とか、「それを申請したのは各大学ではないか」などと、問題の「元凶」探しをしても仕方がない。
法科大学院の出口の問題としては、日弁連等の反対にもかかわらず、平成22年ころには司法試験合格者3000名を目指すとの閣議決定が維持されることが必要であるが、入口の問題である入学定員の現状が適正規模であるか否かについては、各法科大学院が提供できる教育の質という観点から自ら見直すべき時期に来ている。ここで教育の質とは、各法科大学院が、入学した学生に対して、その相当部分が法科大学院の2年なり3年なりの教育課程を経ることによって司法試験に合格しうるか、または法務博士の資格において社会の各般で活躍しうる程度の学力をつけさせているか、遡っていえば、入口の段階でそのような見極めのついた学生を厳選して入学させているか、という問題である。
司法試験の合格率ばかりを基準とすべきではない旨の意見は、もっともであり、各法科大学院が責任をもって教育を実施できる体制になっているかを検討する必要がある。しかし、法科大学院修了生が活躍できる場が十分に確保されていない現状にも目を閉ざすべきではない。司法制度改革審議会意見書では、新司法試験合格者の全てが法廷弁護士になることを前提にしておらず、行政庁・企業法務・国際機関その他、社会の隅々にまで法曹有資格者が行き渡ることが理想とされていた。職域問題についての作業も、担当の委員会は努力しているものの、未だ十分には進んでいない現状で、入学定員をこのままにした場合、制度の犠牲となる学生の数が「入学者の自己責任」というにはあまりに多過ぎるのではないかが問題である。
われわれは、成績評価・進級認定・修了認定の段階で厳格に判断することが必要であることはいうまでもないが、入学者選抜の際にも、本当に法科大学院の教育に耐えうる学生のみを厳選して入学させているかが今問われている。
各法科大学院がこれ迄も個々の事情を抱えつつ教育の改善に努力してきた姿勢を崩すことなく、入学定員の問題についても真摯に取り組んで頂きたい。これは、平成22年度の入試だけで片付く問題ではなく、平成23年度にもわたる問題であるが、法科大学院としては出来るだけ早く姿勢を示すことが必要であると考える。

 

6 次回総会・理事会について

標記について、後藤常務理事より下記の方針であることが報告されました。次回総会は、2009年6月20日(土)午後1時から、國學院大学で開催し、併せて午前中11時に理事会を開催する予定であること。尚、次回はシンポジウムの開催をしない予定であること。

シンポジウム「実務基礎教育の現状と課題」
 総会に引き続き開催されたシンポジウムでは、2008年9月~10月に全法科大学院を対象として実施された法律実務基礎科目等の内容に関するアンケート調査結果の分析、及び「民事訴訟実務の基礎」「刑事訴訟実務の基礎」等の科目の在り方について基調報告が行われた後、意見交換がなされました。

 

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